日々の遺書

雑多なことを徒然と。

信号待ち

 信号待ちの間、子供の私はある遊びをしていた。

 名前はなかったが、あえて名付けるなら「横断歩道渡れるかゲーム」だろうか。

 もちろん、実際に赤信号中の横断歩道を渡るわけではない。脳内で横断歩道を渡る自分を想像していくのだ。ルールは走らない、止まらない。ひたすら徒歩で、わざと遅く歩くこともせず、一定のスピードで目の前の横断歩道に自分を歩かせる。最後のルールは、想像の自分と現実の横断歩道を走る車が接触すると想像の自分は轢かれ、スタート地点――実際に自分が立っている位置に戻され、再び歩き出す。一度も車に轢かれずに向こう側へと渡れればゲームクリアである。

 よほど車の通りが少なければ簡単だが、信号待ちをするような道はそこそこ交通量があり、何回か轢かれて死に続けるうちにいつの間にか信号が青に変わっていた。

 今思えば、簡単な遊びの一環として嫌いな自分を殺し続けることで、何らかの精神の安定を図っていたのかもしれない。

 最近は信号待ちの暇つぶしにはスマートフォンがあるため、この遊びはやっていないが、久しぶりに自分を殺すのもいいかもしれない。